第017回国会 本会議 第9号
昭和二十八年十一月七日(土曜日)
午後一時本会議
沖繩及び小笠原諸島に関する決議案(佐藤榮作君外六十七名提出)より抜粋
●荒舩清十郎君 議案上程の緊急動議を提出いたします。すなわち、佐藤榮作君外六十七名提出、沖繩及び小笠原諸島に関する決議案は、提出者の要求通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
●議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
●議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。
沖縄及び小笠原諸島に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。上塚司君。
〔上塚司君登壇〕
●上塚司君 ただいま議題となりました沖繩及び小笠原諸島に関する決議案につき、各党派を代表いたしまして、提案の趣旨を説明いたします。まず決議案の全文を朗読いたします。
沖繩及び小笠原諸島に関する決議案
奄美大島、沖繩、小笠原各諸島のわが国返還については、国会が屡次決議を重ねてきたところであり、今回、奄美大島の復帰が実現するについては米国の好意に深く感謝するところであるが、同じく旧日本領土内にあり、講和条約においても同一条件下にある沖縄、小笠原両諸島が依然としてわが国主権外におかれていることは、極めて遺憾である。
本院は、政府が国民の総意を体して両諸島のわが国復帰促進につき至急善処せんことを要望する。
右決議する。
〔拍手〕
サンフランシスコ平和条約第三条は、沖縄、奄美大島及び小笠原諸島を国際連合のもとにおける米国の信託統治区域に予定し、かつ信託統治が実現されるまで米国が施政権を有することを定めたのであります。しかるに、これら諸島に対する米国の信託統治を実現するためには国際連合の安全保障理事会の承認を必要としており、これが承認を得ることは現下の国際情勢においてはすこぶる困難なる事情にありまして、平和条約発効後すでに一年有半に至りまするが、いまだ信託統治は実現せず、いまなお米国の施政権が行われておる次第であります。
領土に関する問題は日本国民の最も関心を有することは、いまさら申すまでもないところであります。ことに、沖縄及び小笠原諸島は、奄美大島とともに、同じ血をわかつたわれらの兄弟の住む所であり、その位置も日本本土に近接し、長年にわたり日本本土の行政区域として、地理的に、経済的に、はたまた文化的に密接不可分の関係にあり、国民は一日もすみやかに日本内地の施政に統一されんことを熱望し、島民はこぞつて国会に対する請願、陳情その他あらゆる手段を尽してこれら諸島の日本への完全復帰を懇願いたしております。本院は、院議をもつて、しばしば政府に対し適切なる措置を講ずべきことを要望し、第十六回国会においても、領土に関する決議案を全会一致をもつて可決した次第であります。
沖繩諸島につきましては、昨年四月立法、司法及び行政の各機関を備える琉球政府が設立せられ、民意の暢達に資し、かつ教育、関税その他の点においても日本内地との一体化に留意していることはまことに喜ばしいことでありまするが、いまだ日本への完全復帰に至らないことは実に遺憾であります。
小笠原諸島につきましては、全住民七千七百余名は、昭和十九年旧日本軍の強制分散疎開命令を受けまして、内地に移住を余儀なくされ、今日に至るまで、これら住民は島に帰ることを許されず、なつかしき故郷を失い、またその生業としておつた農業及び漁業を営む道を奪われ、最も悲惨なる状態に追い込められておる次第でありまして、その心情を思うとき、実に気の毒にたえないのであります。右につきましては、第十六回国会において、「小笠原諸島より引揚げさせられた元住民の帰郷に関する決議案」が本院において全会一致可決されております。
なお、奄美大島は従来琉球政府の施政区域に属しておつたのでありまするが、去る八月、ダレス米国国務長官は、日本訪問に際しまして声明を発し、米国政府は平和条約第三条に基く権利を放棄し、日本の管轄権を復活し、奄美大島を日本に統合し、その住民を日本本土に結びつける旨の意向を表明いたしました。この米国政府の措置については、二十余万の奄美大島住民はもちろん、日本国民のひとしく喜びとして、その好意ある態度に対し衷心感謝いたしておる次第であります。
しかるに、沖繩及び小笠原諸島は、前に述べました通り、平和条約第三条に基き、奄美大島とまつたく同一条件のもとにあり、その日本への復帰は、島民の心からなる悲願であるとともに、わが国民のこぞつて熱望しておるところであります。よつて、衆議院の各派は一致して、政府に対し、この希望達成のために、すみやかに適切なる措置を講ぜられんことを要望いたすものであります。
何とぞ各位の御賛同を得まして、全会一致可決せられんことをお願いいたします。(拍手)
●議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕
●議長(堤康次郎君) 起立総員。よつて本案は全会一致可決いたしました。(拍手)
『日本の暦』より
0 件のコメント:
コメントを投稿