日中国交正常化とは、日本と中国共産党率いる中華人民共和国とが国交を結ぶこととなった出来事である。
1972年9月29日、中華人民共和国の北京で行われた「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」(日中共同声明)の調印式において田中角栄、周恩来両首相が署名したことにより成立した。なお、日中共同声明に基づき、日本はそれまで国交のあった中華民国に断交を通告した。
ところで、この声明の中には「戦争状態の終結と日中国交の正常化という両国国民の願望の実現は~」という件がある。つまりこの調印によって日中間の戦争状態が終結したことを意味し、いわばそれ以前は停戦状態ではあっても法的には戦争状態は続いていたということになる。1952年(昭和27年)サンフランシスコ平和条約において、我が国は主権を回復したものの、日本はいまだ交戦権を持たない国家である。(1947年(昭和22年)5月3日に施行された日本国憲法の9条第2項では「国交戦権はこれを認めない」とある)この9条の解釈は、とくに様々である。交戦権においては「国際法において交戦国に認められている権利(Belligerent Rights)」をいうとする説が多数説であり、また政府見解も「交戦者として戦時国際法上認められている権利」をいうとしている。交戦権とは単に戦争をする権利、ということではなく、戦争に付随するその戦争の始まりから終わりまでのいっさいの行動全般の権利を指す。とするならば、憲法9条第2項において我が国は、戦争を終結する講和を結ぶ権利は認められていないということになる。
更に、我が国は日中国交正常化と同時に、台湾の中華民国政府(国民政府)との国交を断絶し、日華平和条約(1952年4月調印)は失効した。日華平和条約とは、日本と中華民国の間の第二次世界大戦における戦争状態を終結した条約(第1条)であった。端的に述べれば、これは戦争状態の終結を破棄したことを意味し、現実的には台湾と戦争状態にはないものの、法的には一旦終結させた戦争を取り消した=宣戦布告という解釈も可能になる出来事であった。
日本国憲法
Chapter II. Renunciation of War
第2章 戦争の放棄
Article 9. Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(2) In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
このような憲法9条を保持しながら、日中国交正常化における一連の我が国の行為の矛盾をどう捉えるべきなのか。この矛盾をいつまでも放置できるものなのか。残念ながらこの件についての議論は活発ではありません。
ちなみに日本国憲法には英語と日本語の両方が現存しているそうです。
まるでニ国間の条約のようですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿